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このたび、東京大学エコノミックコンサルティング株式会社は『小売産業におけるデータの役割:経済学的観点からの評価』と題する報告書を作成いたしましたので、公表いたします。なお、本報告書の執筆にあたり、アマゾンジャパン合同会社からの助成を受けております。
小売産業におけるデータの役割:経済学的観点からの評価
企業はデータを収集し利用することで、より優れた意思決定を行うことができる。また、企業によるデータ利用は、消費者が直面する探索費用を低下させることで競争を促進し、価格の低下と消費者余剰の上昇をもたらす。本報告書では、これらの便益が小売産業においてどう実現しているかを探りつつ、小売業者によるデータ蓄積が参入障壁を構築したり、ユーザーが直面するスイッチングコストを高めたりする可能性を検証する。小売産業では、多くの場合必要なデータを専門のベンダーから調達できること、小売業者間でサービスの差別化が行われていること、そして消費者及びビジネスユーザーの間でマルチホーミングが広く行われていることから、企業によるデータ蓄積が参入障壁の構築やスイッチングコストの引上げをもたらす可能性は高くない。このことは、データアクセス供与の義務化やデータポータビリティの促進といった政策手段の是非を考える上でも含意を持つ。